必敗の戦
社運をかけた重大プロジェクトのリーダーに「会社」は「暗愚の王」を任命した。はぁ?気でも狂ったかなぁ。私は参戦を拒否した。当たり前だ。
全く興味がなかったので無視していたが、周りの報告によるとどうも上手くやっているらしい。どうやら、悪かったのは私のようだ。これは一本取られたな。
しかし、おかしいことに、人員の増援依頼ばかり届く。増員された人員のプロジェクトへの貢献度はほぼ0で、プロジェクト自体は何も進んでいない・・・
やがて、私が参戦せざるを得なくなった。初めは簡単な仕事だったが、承認が降りない。予期せぬ問題があるかもしれない。と言われた。当然シンプルな修正なのでそんなものは起こり得ない。何が起こっているんだ?
次に、難しい仕事をやってみることにした。「暗愚の王」から手順を説明されたが、的外れなものだった。こんな方式を使っても欲しいデータが得られないことはやらなくても明らかだった。とりあえずレポートを作ってやっているふりをして、いつものように命令違反をして独自手法で成果を上げた。すると、深刻な不具合が見つかった。
美辞麗句を並べているのだろう。プロジェクトの評価は順風満帆で、完成間近と思われている。しかし、不具合が深刻すぎてそれどころでは無くなってしまった。
さらに調べると、アーキテクチャに問題があり、より危険な不具合が発生する可能性が示唆された。詳しい技術者にヒアリングをしたところ、仕様上は発生する可能性がある。もう締め切りまでの時間がほとんどない、極めて危険な状況に陥った。
しかし、「暗愚の王」はどういう対応を行なったかというと、隠蔽である。そんな問題、起こりうるはずがない。実装した技術者は信頼できる人だ。ということである。人はたくさんいるが、人材は与えないからお前と適当な新人で調べておけという話だった。韓信かよw
調査はかなり大変なものだった。理論上は不具合が発生しうるが、再現確率が低いため、完全に問題が起こりうる条件を特定するのに大変な労力がかかった。しかし、遂に市場で問題が確実に起こりうることを私は発見した。
すると「暗愚の王」は問題を理解することをとにかく拒否した。理解しなければ問題ではないと思ったのだろう。そして、修正を全て私に命じた。あのさ、このアーキテクチャを設計したのは私ではないし、実装したのも私ではありません。あなたとあなたのチームです。
といっても試しに実装してみたが流石に私にも無理なことがある。もうすでに実装が進みすぎており、修正箇所の目処がつかない。急いで実装しないとテスト計画が崩壊してしまい、このプロジェクトが完全にオミットされてしまうような状態なのに!
そこで私は計略を使った。救援要請である。裏で頭を下げて助けを呼んだ。
暗愚の王曰く「別のチームが助けに来てくれた!これで安心だ!」
そうですね。呼んだのは私です。まぁ、自発的に救援に来て欲しいという不満はある。このプロジェクトに重大インシデントが起こったら、そもそも製品を買ってもらえず、あなた方の成果も零になるんでね。
何とか重大な不具合を治して肩の荷が降りた、わけではなかった。普通に不具合が多すぎる。別の会社と連携して作業しなければいけないのに、会話のチャネルがなんとつながらない。私自ら別会社がすべき仕事やって強引に対話チャネルを作成して不具合修正を進めた。「暗愚の王」は簡易レポートの作成すら拒否していたため、まともに話をしてもらえない状態まで陥っていた。
また、全く私と関係のないプロジェクトに私が救援要請を受けて行くこととなった。当然、何の前提知識も存在していない。もうこうなったら奥義の「神託」を使って、知識が全くない状態から雰囲気だけで成果を強引に上げた。無理ゲーすぎるが何とかしてしまった。
こちらからの救援要請は全て破棄された。あまりにもリソースが足りない地獄なような状況だった。こちらは勉強する時間すらなく、超高難易度のタスクを虚空から成果を上げているような状況であるのに。自分のレポートを読んだが、開発に再現性が全くない。要は本当に勘だけで完全なデバッグを成し遂げている。自分ですらこんな手法は真似できない異次元のものだ。
テスト計画も意味不明だった。問題を起こしてはいけないようなモジュールのテストが後回しにされていた。ここで不具合が起きたらプロジェクトが完全に頓挫するどころか、会社への信用が完全に無くなってしまう。それが後回しにされていて、文句を言っても知らないみたいな態度を取られた。ちなみに、そのモジュールのテストで深刻な不具合が見つかった。責任者はお前だ。私ではない。
「暗愚の王」はよく、タスクの管理業務を行う人間は無能と言っていたため、タスクの管理は行われていなかった。多重に仕事が割り当てられ、何が必要な業務かも明らかでない混沌な状態だった。結局、私が全てを管理することになった。
私が業務の委譲を依頼すると、必ず拒否された。〇〇さんは忙しいからということであった。一番現場で忙しいのは私なんだがwというか、直接会話チャネルを作ったら作業を快諾してくれた。当たり前です。私には作業適性がない業務だから委譲を依頼しています。担当者が作業を拒否すれば当然その人の信用がなくなります。
現代の開発で注意しなければいけないのは、不具合の隠蔽なんて到底できません。特に、売上規模の大きいプロジェクトなら尚更です。SNSなどですぐに拡散されるし、Webに不具合まとめなどといったページが作成されます。不具合は開発者が認知できたものだけではありません。テスト計画は常に完全にはなりません。
そうしておいて、私に待ち受けていた運命は、「狡兎死して走狗烹られ、高鳥尽きて良弓蔵せらる」つまりプロジェクトからの追放である。私の個人プロジェクトごと全部功績を奪われて、追放された。これは歴史上の出来事をよく読んでいれば予想可能だったので、特に何も感じなかった。私は肉体も精神も限界だったので精神病のふりをして逃げた。当然、この仕事に対する私への評価は0であり、私の収入も0になったwあははw
結局、この開発は何だったのだろう?相談してみると「無能」「嫉妬」というワードをアドバイスとしてもらったが、到底そういうレベルだとは思えない。私への「反抗期」というのが一番しっくりきた。私を全て否定して、自分をアピールするという「暗愚の王」の自立心だよ。だから全ての回答を間違える。
私なぜこんな人に仕えていたのだろう?おそらく、一番ハードモードというかルナティックな現場だったからだな。イカれてるだけです。
リアル異世界転生もの
第一章:「私だけチートで弱体化して一騎当千の無双」
第二章:「全てを奪われて追放される」
第三章:「会社を作る」
「必敗の戦」はマグネシウム欠乏症が悪化して体がまともに動かなくなった時の話だ。私は生まれつきマグネシウム欠乏症がひどい。それをAIで直した。
