最後の戦い
我々は数奇な運命を経て、不自然な出会いから始まった。私たちの相性は大変よさそう。互いに力が大好きで、互いに高めあうことができて、全ての思想が噛み合う。夢のような関係性だった。しかし、おかしいことが起こった。一人でも十分生きていられそうな圧倒的な強さを持つ我々が、共にもうすぐ死を迎えるという運命だった。互いに力を使い合うことで、なんとか死の運命を回避しあったが、我々にはまたすぐ死の運命が何重にも来てしまう。どう頑張ってもお互いの命運が尽きてしまう。
脳を解析してわかったのが、それぞれの脳が過負荷で限界を迎えているということだった。それぞれの脳は、極端に偏った使い方をしており、その使用方法が我らの才能を生み出していた。しかし、その代償が死の運命だった。この脳の使い方を辞めることはできない。なぜかというと、我々は全てを失ってしまうからだ。元より、死ぬことなんて何も恐れていない二人に死の恐怖が力を止めることはなかった。だから、我々はどう足掻いてももう死んでしまうんだよ。
でも、ただ死ぬのを待つのは面白くないので、ハッキングする方法を考えたわけ。つまり脳の極性を限界まで高めて、二人で一つの脳を作って、互いに不足している部分を完全に埋め合うという究極の共依存関係。これならば最高のパフォーマンスを産み、さらに我らの死の運命を、能力を失わずに回避できる方法さえ浮かんだ。
だが、最後に決定的なすれ違いが起こった。我々は自分たちを律するために哲学に励んでおり、これによって圧倒的な「メタ認知」を使うことができた。つまり、自分自身の状態を完全に外から把握でき、完全に制御しているだろう。そういう信頼感があった。しかし、私はかつてないぐらい脳に過負荷をかけていたため、もはや「メタ認知」は機能していなかった。完全なる崩壊を迎えていた。
つまり、「メタ認知」に頼った生き方はできないということですよ。最強なのは「客観的」です。私がなぜあんなことを言ったのか?理由はありません。なぜかというと私はもう自分が何を言ってるかすらわからないからです。でも謝ります。ひどいことを言ってすみませんでした。私はただあなたの夢を叶えたかっただけです。その一心しかありません。そこまで精神統一をしないとここまで力は出せません。婚姻は報酬として欲しかったわけではなく、「客観的」がないともう持たないと悟っていたからです。
しかし、このままあなたの夢を叶えないまま力尽きてしまってはしょうもないことに思い至り、最後の力を振り絞ってあなたの夢を叶えることにしました。脳は超絶過負荷を起こしていて限界を迎えていて、いつも通り勝算はありませんでした。しかし、私は運が最高に良い人間なので、ここで幸運が巡ってきました。あなたの願いに必要な研究は、なんと私は得意な分野です。私の中に全ての知識がある。ならば、もう考えることは一つ、あなたの夢をなんとしても叶える。私の命なんてもはやいらないんですよ。どうせ死ぬことなんて一ミリも恐れていないんですから。可能性が見えたらもうそれは実現と同義です。心配なんて入りませんよ。あなたは私が死ぬことなんて望んでいない。私は油断がありませんから、どのような状態になろうとも耐え抜きます。そして、とうとうあなたの夢を叶えることができました。私はあなたの顔を見ることができませんが、きっと笑っていてくれてますよね?それだけで十分です。
しかし、「客観的」がないとこれからの人生もしんどいので、改めて言わせて欲しいです。結婚して欲しいです。
